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入れ歯をいれたロバ
今回は入れ歯を入れたロバのお話を紹介します。
『入れ歯をいれたロバ』

 ロバにかぎらず、だいたい動物に入れ歯なんかはいるのかと思う。だいぶ前のことであるが、ロバに入れ歯をつくった歯医者さんがいる。

 動物園にいたロバなのだが、「まいちもんじ真一文字」という名のたいへんかしこいロバで、戦争中に重い荷物をせおって、非常によく働いてくれた。

 戦後は年をとって動物園にはいり、親切な飼育係さん達にかわいがられていた。かいときの労働のせいもあったのだろう。たいへんに弱りだしてきた。
動物園の人たちは「かわいそうだ、何とかしてやりたい」と思い、入れ歯をつくってやろうと考えた。

 しかし、人間ならともかく、ロバの入れ歯なんか、はたしてつくれるのだろうか、またつくれたとしても、入れ歯をちゃんと入れてくれるのだろうか、と心配になった。いろいろ迷ったあげく、動物園の人たちは東京医科歯科大学の入れ歯をつくる専門の先生に相談した。話を聞いて「それはかわいそうだ、よし、なんとかしてやろう」と。思いたったのが石上健次先生という入れ歯づくりの名人の歯医者さんだった。

 入れ歯をつくるには、まず口の形をとらなければならない。ところが、ロバの歯型をとった人など、どこにもいないのだ。先生はたいへん苦心をして、歯科機械をつくる人たちと相談し、ともかくロバの歯型をとることに成功した。
また、かみ合わせの型もとることができた。ここまでできれば、入れ歯の名人だから、その後の心配はない。ついにりっぱな入れ歯ができあがった。

 ロバはたいへんよろこんで(きっとよろこんだと思う)その入れ歯でえさを食べ、長生きしたということだ。
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